薄明

ごじょうさとる×ふしぐろめぐみ
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さみしい2人

 ふ、と瞼を持ち上げるとタブレット端末を見つめている五条と天井が見えた。寝落ちる前、最後の記憶ではソファに凭れていた筈だったのだけど。
「おはよ」
「…また勝手に膝枕ですか」
 伏黒が寝ている間に学長からの呼び出しから戻ってきた五条の仕業らしい。五条がいない間に五条の部屋でうたた寝をするといつもこうだ。勝手に動かされても起きない自分も自分だが。
 天井の灯りが五条の白い髪を綺麗に光らせていた。まるで透けているかのように蛍光灯の光と五条とが溶け合っている。寝起きのまだ少し鈍い頭で、五条の頬に手を伸ばす。見ているものは次の仕事の資料だろうに、邪魔したらいけないと思うのに先に手が動いていた。
「…溶けそうですね」
 触れた頬には当たり前だが温度があり感触があった。
「なに?どういうこと?」
 触れてきた伏黒の手に頬を寄せながら五条が緩く笑う。直接触れた頬はちゃんと暖かくて、こうして何にも阻まれずに触れるようになったのはいつだったのだろうかと考える。出会ったばかりの頃は五条の術式により見えない薄い何かに阻まれて触れることは出来なかったはずなのに、いつの間にかそれはなくなっていた。わざわざ伏黒に会う時だけ解いているわけでもないだろうに。その意味を聞いたことは無いけれど、それがどういうことかは分かる。
「光に溶けて消えちゃいそうだなって」
「ふぅん…」
 頬を撫でていた伏黒の手を取り上げ、五条が背中を丸めて顔を寄せる。逆光で溶けていた境目が顕になった。鼻先が触れ合う距離で、五条が「これなら消えない?」と言う。人が溶けるわけなんてないのに。分かっているのに何故だか酷く安心して、こくりと頷いてから五条の首に腕を回した。苦しい体勢だろうに何も文句を言わない五条に甘える。
「ね、恵」
「なんですか」
 どんな夢を見たのか、もう記憶にはないけれど酷く寂しい気持ちだった。人肌がどうしても恋しくて、五条に触れたくて、いることを確認したくて仕方ない。本当にどんな夢をみてしまったのだろう。
「僕が死んだら恵に取り憑いてあげる。だから恵が死んじゃったら僕に取り憑いてね」
「…なんですか、それ」
「恵が寂しそうな顔してたから」
 五条の腕が伏黒にまわされ、ソファの上で不格好に抱き合う。少し苦しくて窮屈なのに、今はそれが正解な気がした。
「ちゃんと、死ぬまで取り憑いてくださいね」
 五条の背中越しに見えた天井は眩しかった。

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