薄明

ごじょうさとる×ふしぐろめぐみ
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冷めない珈琲
柊英です


「違っていたら怒ってくださいね?」
 そう1つ前置きして柚月は神妙な顔で英知を見た。そんな顔をされてしまえばついついこちらもかしこまってしまうのが人間というもので、英知と柚月だけの会議室で思わず背筋を伸ばした。
 今後のQUELLについて、忙しい柊羽に代わって今日は英知が彼と話し合いをしていたのだがそれがやっと一段落したところだ。肩の力を抜いて、珈琲でも飲みながら一息。のはずだったのだけど。
「…な、何でしょう…」
「そんなかしこまった話ではないんですけど…いや、軽い話でもないんですが…」
 ごくりと生唾を飲み込む音すらやけに大きく響いた。
「英知くんと和泉さん、お付き合いされてますよね?」
「………」
「あっ、違いましたか⁉」
 返事を返せずに黙り込んだ英知に柚月が慌てたように視線を彷徨わせる。手も同じようにあっちこっちへ彷徨わせて。1人ですいませんだとか、やっぱ勘違いですよねだとか、すいませんだとか頭を下げ始めている柚月に英知はただただ、「お付き合い、しております…」としか返せなかった。折角のインスタントコーヒーが手のひらの熱で煮立ってしまうのではないか、なんて。ここは恥じらうところではなく、さっと青ざめるところなのではないかとどこか冷静な頭が言っているが人に指摘されるとやはり恥ずかしいものなのだ。
「あっ、別にばらそうとかそういうことはないんですよ⁉」
「…それは、なんとなく、分かります…」
「よかった…」
「えーっと、俺達そんなに分かりやすかったですか…?」
 幸いなことに珈琲は煮立つことはなく、静かにカップの中にいてくれた。がしかし、一体どこが決め手で知られてしまったのだろうと考えを巡らせれば漸く血の気が引いていくようだった。
 英知の言葉に、柚月がようやっと騒がしく動かしていた手をテーブルに置いた。少しだけ視線を斜め上に持ち上げて、何かを思い出すようにふっと彷徨わせて。
「視線、ですかね。いつだってQUELLの中にはお互いを想いやって慈しむ視線や空気が満ちていますが、英知くんと和泉さんはまたちょっと違うというか……上手くは言い表せないんですけどね」
 そう言ってはにかんだ柚月に一体いつの、どの瞬間を思い浮かべたのかなんて聞けやしなかった。視線、空気、そんなもの自分で意識してどうにかなるもんじゃあない。気をつけないととは当然思うけれど、なんだかこれじゃまるで。
「…オーラで惚気けてるみたいですね…」
「っふふ、言い得て妙、ですね」
 珈琲には英知がどんな顔色をしているかなんて映らないが、柚月が幸せいっぱいなんですねなんて笑うからきっと茹でだこみたいな顔をしているのだろう。
 そりゃそうだ。幸せいっぱいなのだから。

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