薄明

ごじょうさとる×ふしぐろめぐみ
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飴玉スーパーブルームーン

 月が綺麗ですね、とは恐らく最も知られた洒落てる愛の告白だ。日本人ならもっと奥ゆかしく愛の告白をする、なんて理由でこの洒落た翻訳が生まれたらしい。
 良い子はそろそろ寝る時間、伏黒の任務の付き添いを終えた五条にとっては帰宅時間だ。街灯に煌々と照らされていても今夜の月は何時になく大きく丸く存在を主張していた。出歩く人もいない2人だけの夜更け、やけにでかい月、これは意外といい雰囲気というやつで日本人らしい奥ゆかしい告白が映えるのではないかと五条は月を指差しながら隣にいる伏黒に声をかけた。
「ね、恵」
「月が綺麗ですね、とか言いたいんですか」
「……」
 出鼻をくじかれてむぅ、と口を尖らせた五条に伏黒が口角だけを持ち上げて「図星」と笑った。
「つまんないの」
「ベタすぎですって」
 言いながら制服のポケットに手を突っ込んだ伏黒が、中から黄色くて丸い飴玉を取り出した。大ぶりで表面にざらめが付いているそれを五条に差し出しながら今度は伏黒が月を指差す。
「俺からプレゼントです」
「…いやこれ貰ったはいいけど食べないからって僕に回したよね?」
「そこは「綺麗な月をありがとう」とかなんとか言って大人しく食べてくださいよ。ちなみに虎杖から貰ったやつです」
「えぇ…」
 こんなの悠仁が知ったら泣いちゃうよ、と言いながら飴玉を受け取れば、大体察してるから平気ですよ、なんて返される。理解のある学友で何よりだと飴玉の個装を剥がし口に放り込めば荒いざらめが口の中を引っかいた。ざらざらして、1度口に入れたらある程度溶けるまで喋れなくなる大玉の飴は昔から変わらない甘さだ。まだ伏黒が小さかった時、同じ飴を食べてほっぺたを飴玉の形に丸く膨らませていたのを思い出す。
 あの頃はその子供に月が綺麗ですねだとか言ってみたくなるとは思ってもいなかった。ましてや人からの貰い物だとしても、月に見立てた飴玉をくれるとも。この会話の流れで。
「…ふぇふみ」
「はい?」
 口内の大部分を占める飴玉のせいでまともに呼べなかったが、呼ぶとしたら横にいる伏黒しかいない。こちらを振り向いた伏黒が五条の丸く膨らんだ頬を見てまた小さく笑った。
 月を指差し、自分の頬を指差し、最後に伏黒を指差す。
「あいのふぉくはく?」
「…何言ってんのか分かりませんよ」
 五条の言葉をあしらうように手を軽く降り、少し早足になった伏黒の耳は僅かに赤い。大きくて丸い月が街灯よりもよくそれを教えてくれた。これは虎杖に感謝しないといけないかな、などと思いながら数歩先を歩き出した伏黒の後を五条は追いかけた。

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