薄明
ごじょうさとる×ふしぐろめぐみ
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今やすっかり成長して頬の丸さもなくなってしまった伏黒だが、そんな彼にも当然幼い頃はあった。
1度だけ、そんな小さな伏黒に我儘を言って一緒にお風呂に入ったことがある。まだ小学生、それも1年か2年そこらの子供だった伏黒は五条の我儘を突っ撥ねることが出来なかった。それをいい事にちょっとした悪ふざけ半分、普段接することの無い子供への興味半分で持ちかけたのだ。
安くてボロいアパートの浴室は五条の暮らす家と比べたら驚く程狭かった。小さな2人にとってはこれで丁度いいのかもしれないが、五条が入るには随分と窮屈だ。天井だってそう高くなくて、ぐっと手を伸ばしてしまえば届いたかもしれない。
浴室でこれなのだから湯船なんてもっと狭くて、五条が先に浸かれば張られた湯が半分ほど溢れ出た。中で体育座りをした五条の上半身は殆どはみ出てしまったし曲げた膝だって飛び出している。これじゃあ冬場は寒いだろうなと思いながら未だに湯船を前に立ち尽くしている伏黒を手招けば、ずっと小さな口をきゅっと閉じていたのをやっと開いて「どこに入るんだよ」と言ったのだった。
「ここ。乗っかっていいからさ」
体育座りしている膝と身体の隙間を指させば、伏黒はそれはもう嫌な顔をした。未だ警戒心の強い猫のようにそこに立つ姿に1度笑って、腕を伸ばした。狭い浴室では立ち上がらなくてもちょっと頑張って腕を伸ばすだけで簡単に伏黒の身体に手が届く。逃げようとする前に持ち上げて無理やりに五条の身体の前に降ろしてしまえば、それは意外と上手く収まった。幼くて、小さくて、柔らかい背中がどこか緊張した風に強ばって五条の胸に触れる。
五条がちょっと腕に力を込めたら潰れてしまいそうな身体に、持ち上げられた時に咄嗟に縋るように伸ばされた小さな手に、暖かい浴室にいたからかうっすらと赤くなっていた頬に。それらを見て、胸が柔らかく締め付けられる感覚がしたのは何故だろうか。愛しいと、思ってしまったのは何故だろうか。
「なーんて事もあったよね」
「……ないですね」
「いやあったよ」
果たして何年ぶりだろうか、再び五条は伏黒に我儘を言い一緒にお風呂に入ろうと駄々を捏ねた。残念ながらしっかりと断ることが出来るように大きく成長してしまった伏黒は頷いてはくれなかったので、1人で浴室へと向かったのだけど。
五条に合わせた十分に大きな浴室はとてもあのアパートのものとは似ても似つかないが、たった1度のお風呂の思い出を振り返るには十分だった。
「あの頃の恵も、可愛かったよね」
その頃の話をすると彼は眉間に皺を寄せて嫌そうな顔をするのだけど、敢えてその顔を見るのもまた一興というものだ。
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2023.09.06 19:44:03
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今やすっかり成長して頬の丸さもなくなってしまった伏黒だが、そんな彼にも当然幼い頃はあった。
1度だけ、そんな小さな伏黒に我儘を言って一緒にお風呂に入ったことがある。まだ小学生、それも1年か2年そこらの子供だった伏黒は五条の我儘を突っ撥ねることが出来なかった。それをいい事にちょっとした悪ふざけ半分、普段接することの無い子供への興味半分で持ちかけたのだ。
安くてボロいアパートの浴室は五条の暮らす家と比べたら驚く程狭かった。小さな2人にとってはこれで丁度いいのかもしれないが、五条が入るには随分と窮屈だ。天井だってそう高くなくて、ぐっと手を伸ばしてしまえば届いたかもしれない。
浴室でこれなのだから湯船なんてもっと狭くて、五条が先に浸かれば張られた湯が半分ほど溢れ出た。中で体育座りをした五条の上半身は殆どはみ出てしまったし曲げた膝だって飛び出している。これじゃあ冬場は寒いだろうなと思いながら未だに湯船を前に立ち尽くしている伏黒を手招けば、ずっと小さな口をきゅっと閉じていたのをやっと開いて「どこに入るんだよ」と言ったのだった。
「ここ。乗っかっていいからさ」
体育座りしている膝と身体の隙間を指させば、伏黒はそれはもう嫌な顔をした。未だ警戒心の強い猫のようにそこに立つ姿に1度笑って、腕を伸ばした。狭い浴室では立ち上がらなくてもちょっと頑張って腕を伸ばすだけで簡単に伏黒の身体に手が届く。逃げようとする前に持ち上げて無理やりに五条の身体の前に降ろしてしまえば、それは意外と上手く収まった。幼くて、小さくて、柔らかい背中がどこか緊張した風に強ばって五条の胸に触れる。
五条がちょっと腕に力を込めたら潰れてしまいそうな身体に、持ち上げられた時に咄嗟に縋るように伸ばされた小さな手に、暖かい浴室にいたからかうっすらと赤くなっていた頬に。それらを見て、胸が柔らかく締め付けられる感覚がしたのは何故だろうか。愛しいと、思ってしまったのは何故だろうか。
「なーんて事もあったよね」
「……ないですね」
「いやあったよ」
果たして何年ぶりだろうか、再び五条は伏黒に我儘を言い一緒にお風呂に入ろうと駄々を捏ねた。残念ながらしっかりと断ることが出来るように大きく成長してしまった伏黒は頷いてはくれなかったので、1人で浴室へと向かったのだけど。
五条に合わせた十分に大きな浴室はとてもあのアパートのものとは似ても似つかないが、たった1度のお風呂の思い出を振り返るには十分だった。
「あの頃の恵も、可愛かったよね」
その頃の話をすると彼は眉間に皺を寄せて嫌そうな顔をするのだけど、敢えてその顔を見るのもまた一興というものだ。
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