薄明

ごじょうさとる×ふしぐろめぐみ
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弔い

 この子供は、人よりよく寂しさというものを分かっている。寂しさというものを分かっていて、それに慣れることも覚えていて、泣いても意味などないことを知っていて、でも忘れることは出来ない。中途半端に背伸びしたきり戻れない子供だった。彼は危ういバランスで成り立っている。
「静かだね」
「…いつも静かですよ、俺は」
 言外に、虎杖や釘崎とは違うと滲ませながら伏黒は背後に現れた五条をじとりと睨めつけた。
 学生寮の裏庭、あまり人のこない奥まった木の下に伏黒はいた。幼い時から変わらない、簡素で粗末で強い風が吹けば倒れてしまうような弔い方をする。それを可愛らしいと思う反面、優しすぎる程に優しい子だと思う。
「それ、悠仁の?」
 指さした先には名前も何も無く地面に突き立てられただけの割り箸が2本あった。ただの割り箸、という辺りがよりちんけに見せるが伏黒の中での精一杯の妥協点なのだろう。ありすぎる優しさは呪術師という仕事において持たないに越したことはないと知っているから。
「2本あるから違うか。大蛇と玉犬?」
 伏黒の眉間に寄せられた皺が、深くなる。
「笑いに来たなら帰ってくださいよ」
「別に笑ってないじゃない。恵は優しいねって」
 式神など言ってしまえばただの道具でしかない。壊れてしまえば残りを使えばいい。五条が今までに見た事がある術師はどれもそういう人間ばかりだ。最低限の情はないと人ではなくなってしまう、けれどそれ以上の情を持てば呪術師として死しか待っていない。ここはそういう非情な世界だ。
 壊れてしまった2匹の式神の為にわざわざ墓などあしらえてやるこの子供を、そこに引き込んでしまったことを後悔したことが1度もないと言えば嘘になるけれど。
「優しくなんかないですよ。優しかったら、…」
 そこで言葉を切った伏黒が小さく舌打ちをして五条の脇をすり抜けようと足を進めた。打ち切られた言葉の続きなんて長い付き合いの五条でも分かりやしない。優しさがもたらす寂しさも痛みも、捨てれないのなら慣れなくてはいけないと知っているこの子は一体なにを言いかけたのだろう。聞いたところで答えてはくれないに違いないのだけど。
「泣いてあげてた?」
 そのまま通り過ぎて行った伏黒は五条の言葉に返事を返さずに足早に寮の中へと帰っていった。

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