薄明
ごじょうさとる×ふしぐろめぐみ
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向日葵(side伏黒)
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昔、向日葵が怖かった。特に枯れて色褪せた向日葵が恐ろしくて仕方なかった。太陽に向かってぐんぐんと伸びた筈の茎の先に付く花が、枯れてしまえばもう上を向くことも無く俯く。まるで巨大な目玉がこちらを覗くような、その枯れた向日葵を見る度に恵は夏の終わりはこれだから嫌だと思ったものだった。伸びた背丈は簡単に恵も姉も追い越して真上から見下ろしてくる。それもまた、恐ろしいのだった。
しかし向日葵が怖いなどと可愛いことを思っていたのも一瞬のことで、そう長くは続かなかった。
小学三年生の夏の終わり。五条に連れられて姉と2人で旅行に出かけた。といっても電車を乗り継いで近場の総合公園に行っただけなのだけど。旅行とも呼べないようなお粗末なもの。でも電車に乗って行くような場所は初めてのことだった2人にとっては間違いなく初めての旅行だった。どんどん知らない土地へと景色の変わっていく車窓に、隣に座る姉はそわそわと視線を泳がせていたし、自分も浮き立つ気持ちを隠すようにじっと窓の外を眺めていた。
「ここね、向日葵畑あるんだって」
五条が言っていた言葉だ。きっと五条の予定ではその向日葵が咲き誇っている頃に行きたくて言ったのだろうが、結局夏が終わる頃になってしまったのだった。
背丈の高い向日葵が簡単に恵も津美紀も追い越して隠してしまうのが、そのまま攫われてしまうのではないかと恐ろしかった。枯れた向日葵が、じっとこちらを見下ろして取り囲んでしまうような、そんな想像すらした。実際、夏も終わる頃にやってきた公園ではもう向日葵は萎れ始めていて、天を向いている筈の花は下を向き始めていた。
けれど津美紀が言った。さとるくん大きいね、と。その言葉に知らず知らず向日葵の視線から逃れるように俯いていた顔を持ち上げれば、向日葵から頭1つ分抜き出た五条の姿があった。それを見たら途端に向日葵が小さく見えてしまって、ふっと肩から力が抜けて、拍子抜けしてしまった。何でも隠せてしまうと思った向日葵は、しかしそうではなかったのだ、と。
という昔の記憶に恵は深い溜息を吐き出した。こんな思い出、たぶん五条に語ることは一生ないだろう。
「人の顔見て溜息吐かないでよ」
「…向日葵のよく似合う頭だなぁと」
「それ褒めてる?」
夏と言えば向日葵!と勢いよく部屋に押し掛けてきた五条の手にはどこで手に入れたのか、向日葵が何本かあった。それを誰に押し付けるのか、考えるまでもなくて再び溜息を吐き出した。
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2023.09.06 20:51:10
小説
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昔、向日葵が怖かった。特に枯れて色褪せた向日葵が恐ろしくて仕方なかった。太陽に向かってぐんぐんと伸びた筈の茎の先に付く花が、枯れてしまえばもう上を向くことも無く俯く。まるで巨大な目玉がこちらを覗くような、その枯れた向日葵を見る度に恵は夏の終わりはこれだから嫌だと思ったものだった。伸びた背丈は簡単に恵も姉も追い越して真上から見下ろしてくる。それもまた、恐ろしいのだった。
しかし向日葵が怖いなどと可愛いことを思っていたのも一瞬のことで、そう長くは続かなかった。
小学三年生の夏の終わり。五条に連れられて姉と2人で旅行に出かけた。といっても電車を乗り継いで近場の総合公園に行っただけなのだけど。旅行とも呼べないようなお粗末なもの。でも電車に乗って行くような場所は初めてのことだった2人にとっては間違いなく初めての旅行だった。どんどん知らない土地へと景色の変わっていく車窓に、隣に座る姉はそわそわと視線を泳がせていたし、自分も浮き立つ気持ちを隠すようにじっと窓の外を眺めていた。
「ここね、向日葵畑あるんだって」
五条が言っていた言葉だ。きっと五条の予定ではその向日葵が咲き誇っている頃に行きたくて言ったのだろうが、結局夏が終わる頃になってしまったのだった。
背丈の高い向日葵が簡単に恵も津美紀も追い越して隠してしまうのが、そのまま攫われてしまうのではないかと恐ろしかった。枯れた向日葵が、じっとこちらを見下ろして取り囲んでしまうような、そんな想像すらした。実際、夏も終わる頃にやってきた公園ではもう向日葵は萎れ始めていて、天を向いている筈の花は下を向き始めていた。
けれど津美紀が言った。さとるくん大きいね、と。その言葉に知らず知らず向日葵の視線から逃れるように俯いていた顔を持ち上げれば、向日葵から頭1つ分抜き出た五条の姿があった。それを見たら途端に向日葵が小さく見えてしまって、ふっと肩から力が抜けて、拍子抜けしてしまった。何でも隠せてしまうと思った向日葵は、しかしそうではなかったのだ、と。
という昔の記憶に恵は深い溜息を吐き出した。こんな思い出、たぶん五条に語ることは一生ないだろう。
「人の顔見て溜息吐かないでよ」
「…向日葵のよく似合う頭だなぁと」
「それ褒めてる?」
夏と言えば向日葵!と勢いよく部屋に押し掛けてきた五条の手にはどこで手に入れたのか、向日葵が何本かあった。それを誰に押し付けるのか、考えるまでもなくて再び溜息を吐き出した。
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