薄明
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向日葵(side五条)
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旅行というものを、この子達は知らなかった。電車でたった1時間足らず、乗り換えは1回。その程度の距離だというのにこの子供達は旅行だとはしゃいでいた。1人は目に見えて嬉しそうに、もう1人は分かりにくいけれど落ち着かない様子で。それを可哀想だと思わないでもないが、しかしこの子達は自分達が可哀想だと思われる立場にいることを聡い頭でよく理解していた。理解していたからこそ、冗談でも口に出すのははばかられた。それだけ、情が生まれてしまったということなのだろうけれど。
「ここね、向日葵畑あるんだって」
夏が始まる少し前にそう伝えた時、津美紀の方は瞳を輝かせたが恵の方はちょっとだけ嫌そうに口を尖らせた。いつも五条がすることに口を尖らす子ではあったが、僅かに違う様子に向日葵が嫌いなのかもしれないと目星を付ける。人の背丈を簡単に超えるくらい大きくなる向日葵は、この姉弟くらいなら簡単に追い越して包み込んでしまうだろう。出会った時はあんなに子供らしかぬ子供だったというのに、やはり所詮は子供なのだと微笑ましくなる。
しかし実際に公園へと行くことが出来たのは夏が終わる頃だった。いつまで経っても五条に頼りきりなおかげで仕事に追われて時間が取れなかったのだ。無理に時間を作ってもいいが、それをしたら後でどんなしっぺ返しが来るか分かったものじゃない。人使いが荒いのだ。
そうしてやっと夏も終わりかけ人も少し減り始めた公園へと着けば、案の定向日葵畑は枯れ始め、天高く上を向いている筈の花は下を向いていた。気味悪く映るそれに、分かっていたとしても少し残念に思っていれば津美紀がにこにことしながら言った。さとるくん、大きいね。と。その言葉に視線を少し動かせば、2人を追い越す向日葵は五条の視線の少し下にあった。向日葵は大きいもの、でも五条はそれよりもっと大きいもの。子供らしい素直な言葉に笑えば、向日葵のずっと下で恵は尖らせていた口を丸く開けてこちらを見上げていた。
任務が終わり、適当にコンビニに寄り道した帰り。いつもなら興味もなく通り過ぎる花屋の店先に向日葵が並んでいた。公園で見たものとは違う、多少短く切りそろえられたそれに遠いようで近い夏のことを思い出す。
きっと恵は知らないし知ることもないが、実は幼稚園くらいの時の五条も向日葵が怖かったのだ。なんでも出来るすごい力があったって、背はそんなあっという間に伸びやしない。自分を追い越して視界を覆い隠す向日葵の群れなんて特に怖かった。だからあの日の恵が嫌そうな顔をした理由が手に取るように分かったのだ。可愛い共通点だ。
「この向日葵、何本かくれない?」
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2023.09.06 20:56:42
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旅行というものを、この子達は知らなかった。電車でたった1時間足らず、乗り換えは1回。その程度の距離だというのにこの子供達は旅行だとはしゃいでいた。1人は目に見えて嬉しそうに、もう1人は分かりにくいけれど落ち着かない様子で。それを可哀想だと思わないでもないが、しかしこの子達は自分達が可哀想だと思われる立場にいることを聡い頭でよく理解していた。理解していたからこそ、冗談でも口に出すのははばかられた。それだけ、情が生まれてしまったということなのだろうけれど。
「ここね、向日葵畑あるんだって」
夏が始まる少し前にそう伝えた時、津美紀の方は瞳を輝かせたが恵の方はちょっとだけ嫌そうに口を尖らせた。いつも五条がすることに口を尖らす子ではあったが、僅かに違う様子に向日葵が嫌いなのかもしれないと目星を付ける。人の背丈を簡単に超えるくらい大きくなる向日葵は、この姉弟くらいなら簡単に追い越して包み込んでしまうだろう。出会った時はあんなに子供らしかぬ子供だったというのに、やはり所詮は子供なのだと微笑ましくなる。
しかし実際に公園へと行くことが出来たのは夏が終わる頃だった。いつまで経っても五条に頼りきりなおかげで仕事に追われて時間が取れなかったのだ。無理に時間を作ってもいいが、それをしたら後でどんなしっぺ返しが来るか分かったものじゃない。人使いが荒いのだ。
そうしてやっと夏も終わりかけ人も少し減り始めた公園へと着けば、案の定向日葵畑は枯れ始め、天高く上を向いている筈の花は下を向いていた。気味悪く映るそれに、分かっていたとしても少し残念に思っていれば津美紀がにこにことしながら言った。さとるくん、大きいね。と。その言葉に視線を少し動かせば、2人を追い越す向日葵は五条の視線の少し下にあった。向日葵は大きいもの、でも五条はそれよりもっと大きいもの。子供らしい素直な言葉に笑えば、向日葵のずっと下で恵は尖らせていた口を丸く開けてこちらを見上げていた。
任務が終わり、適当にコンビニに寄り道した帰り。いつもなら興味もなく通り過ぎる花屋の店先に向日葵が並んでいた。公園で見たものとは違う、多少短く切りそろえられたそれに遠いようで近い夏のことを思い出す。
きっと恵は知らないし知ることもないが、実は幼稚園くらいの時の五条も向日葵が怖かったのだ。なんでも出来るすごい力があったって、背はそんなあっという間に伸びやしない。自分を追い越して視界を覆い隠す向日葵の群れなんて特に怖かった。だからあの日の恵が嫌そうな顔をした理由が手に取るように分かったのだ。可愛い共通点だ。
「この向日葵、何本かくれない?」
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