薄明

ごじょうさとる×ふしぐろめぐみ
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ハンドクリーム
まだ詳細な調伏の流れとかいつからごじょの任務について行ってたのか判明してなかった頃に書いたやつ

 冬になると決まって缶のハンドクリームを持って伏黒の元へやってくる。毎年缶の絵柄も中身も違うそれは、五条が持ってくる度に初めての香りでもって伏黒の手を包んだ。
 小学三年生辺りだろうか。伏黒がようやっと玉犬を当たり前に呼べるようになって飼い慣らし始めた頃、五条は幼いながらに荒れた伏黒の手を見て言ったのだ。恵は手を使うんだからもっと大事にしないと、と。親のいない自分たちはできる家事は自分でしなくてはならない。それも相まっていつも自分たち姉弟の手は荒れ放題だった。それから五条が手土産にハンドクリームを持ってきたのはすぐのことだった。
「ハンドクリームくらい、もう自分で塗れますよ」
 つむじを眺めながらの伏黒の言葉に、五条は上機嫌に鼻歌を歌いながら手を動かすだけで答えない。ソファに腰掛ける伏黒の為にわざわざカーペットの上に座って、ひたすらに伏黒の手にクリームを塗り込んでいく。
 五条の大きな手がクリームを纏って伏黒の手を包む。手のひら、甲、指の股から指先、手首まで。ひたすらに往復して、時折爪にも爪の際にも塗り込まれるその動きにいやらしさなんてものは全くなくて、ただ伏黒の為だけに動いている。
「恵ってさ、冷え性じゃん」
「まぁ、そうですね」
「手を大事にしてほしいってのもあるんだけどさ、いつも冷たいから」
 あっためてあげたくて。
 昔から子供みたいな体温の手が、冷たい伏黒の指先を温める。ふわりと柔らかく香るレモンと、五条との境が曖昧になる手のひら。とっくに1人でハンドクリームくらい塗れるのだけど、そんなことを言われてしまったらもうそんなことは言えなくなってしまった。五条がこうして冬になる度に甲斐甲斐しく伏黒の手にハンドクリームを塗り込み、芯まで冷えた指先に温もりを与えてくれる。それが存外好きで、冷え性も悪くないな、なんて思っているのだから。

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