薄明
ごじょうさとる×ふしぐろめぐみ
非公式二次創作ブログサイト
info
生存確認(Misskey)
問い合わせ
メイン
薬指
野薔薇ちゃん死ぬ前に書いた死ネタ
続きを読む
虎杖達が急いで任務を終わらせて駆けつけた時には、もう伏黒はすっかり身体を綺麗にされて霊安室に置かれていた。呪術師にしては珍しく顔も残っていて五体も残っていて、傍から見たら寝ているだけにしか見えない程に美しい遺体だった。ひやりとした霊安室の中で眠る伏黒はそれにも負けないくらい冷たくなっていて、彼が二度と目覚めないことを虎杖にも釘崎にも良く教えてくれた。
何故こうも彼の遺体が美しいのかといえば、それは五条も同行していたからだ。あんたがいながらなんで伏黒が死んだのよ、と叫ぶ釘崎に五条は言う。「同じ任務についてても常に面倒を見れるわけじゃない。恵も大人だし、そんな大人の面倒を見るほど暇じゃない」その言葉に釘崎は悔しげに舌打ちを零して霊安室を飛び出していったが、虎杖だけはそこに残った。
「さっき家入先生から聞いたんだけどさ、」
ちらりと五条の顔を見る。目隠しに覆われて悲しんでいるのか何も感じていないのかは分からないけれど、一応この2人が恋仲であったことは虎杖も釘崎も知っていた。だから釘崎は五条に掴みかかったし、虎杖もこんなことを聞くのだ。
「伏黒の薬指だけ見つかってないんだって。左手の。先生知らない?」
その虎杖の言葉にうぅん、と唸って五条はわざとらしく顎に手を置いた。
「さぁ?僕が見た時にはなかったし、どっかの呪いが指フェチだったんじゃない?」
____
五条が自分の持ち場を片付けて伏黒の元に向かった時、既に伏黒は地面に倒れていた。最後に残ったのであろう呪霊が伏黒の頭を噛み砕こうとしていたが、直ぐに消し飛ばしてしまったのでそれがどんな呪霊なのかも伏黒の死因も分からなかった。けれど随分と綺麗な遺体だった。まるで眠っているような。死んでそう時間が経っていないのだろう、既に溶けて形を失いかけた玉犬が1人で鳴いていた。
それを見て悲しい、よりも1番に頭をよぎったのは「彼の遺言を守らねば」だった。
伏黒が高専を卒業した日、伏黒の住む部屋へと訪れた五条は祝いにと指輪を渡した。こんな明日が不安定な仕事で形に残るようなものを渡すのは愚かとしか言いようがないが、それでも何かを渡したかった。五条の愚かしいエゴだ。しかしそれを二つ返事で受け取った伏黒は薬指に嵌めたそれを撫でながら言った。
「俺が死んだら、絶対にこれ回収してくださいね」
「なんでよ、あげたんだから死んでも返品不可だよ」
「俺からの一世一代の愛の告白だと思って」
「返品が?」
「そうです」
五条から受け取ったそれを、安い蛍光灯の明かりに翳して伏黒は穏やかに微笑んでいた。死後の話なんてしているとは思えないほどに。
「まぁ、そうですね、よく煮て出汁を取るでもいいし、何かしらの方法で保存してもらうでもいいですし、庭先に埋めてくれるんでもいいです」
五条を置いてきぼりにして伏黒は淡々と言い切ると、それで満足したように翳していた手を降ろした。
「いまいち話が見えないんだけど」
「俺が死んだら分かりますよ。俺からの最大級の告白です」
指輪、ありがとうございます。伏黒はそう言ってまた大事そうに左手の薬指の付け根を撫でたのだった。
さて、彼は昔から言えない言葉の多い子供であった。今こうして、津美紀と違って永遠に目覚めない物言わぬ眠り姫となってしまったのも、助けての一言が言えないからだ。
少しづつ我儘を言えるように育ててきたつもりではあったけれど、それでも終ぞ伏黒が言えなかったのは助けてと、約束と、願いであった。明日デートしよう程度の約束すら言えず、これからの願いすら言えない子だった。そんな子が、あの日五条に伝えた遺言の意味をやっと知る。
「なるほどね。いじらしい事するじゃない」
伏黒の指から指輪が抜けることはなかった。
畳む
2023.09.06 22:12:13
小説
編集
初期表示に戻る
小ネタメモ
(91)
小説
(107)
絵
(215)
その他
(7)
めぐちゃん先生
(3)
祓本
(3)
オメガバ
(3)
芸パロ
(3)
Powered by
てがろぐ
Ver 4.2.0.
野薔薇ちゃん死ぬ前に書いた死ネタ
虎杖達が急いで任務を終わらせて駆けつけた時には、もう伏黒はすっかり身体を綺麗にされて霊安室に置かれていた。呪術師にしては珍しく顔も残っていて五体も残っていて、傍から見たら寝ているだけにしか見えない程に美しい遺体だった。ひやりとした霊安室の中で眠る伏黒はそれにも負けないくらい冷たくなっていて、彼が二度と目覚めないことを虎杖にも釘崎にも良く教えてくれた。
何故こうも彼の遺体が美しいのかといえば、それは五条も同行していたからだ。あんたがいながらなんで伏黒が死んだのよ、と叫ぶ釘崎に五条は言う。「同じ任務についてても常に面倒を見れるわけじゃない。恵も大人だし、そんな大人の面倒を見るほど暇じゃない」その言葉に釘崎は悔しげに舌打ちを零して霊安室を飛び出していったが、虎杖だけはそこに残った。
「さっき家入先生から聞いたんだけどさ、」
ちらりと五条の顔を見る。目隠しに覆われて悲しんでいるのか何も感じていないのかは分からないけれど、一応この2人が恋仲であったことは虎杖も釘崎も知っていた。だから釘崎は五条に掴みかかったし、虎杖もこんなことを聞くのだ。
「伏黒の薬指だけ見つかってないんだって。左手の。先生知らない?」
その虎杖の言葉にうぅん、と唸って五条はわざとらしく顎に手を置いた。
「さぁ?僕が見た時にはなかったし、どっかの呪いが指フェチだったんじゃない?」
____
五条が自分の持ち場を片付けて伏黒の元に向かった時、既に伏黒は地面に倒れていた。最後に残ったのであろう呪霊が伏黒の頭を噛み砕こうとしていたが、直ぐに消し飛ばしてしまったのでそれがどんな呪霊なのかも伏黒の死因も分からなかった。けれど随分と綺麗な遺体だった。まるで眠っているような。死んでそう時間が経っていないのだろう、既に溶けて形を失いかけた玉犬が1人で鳴いていた。
それを見て悲しい、よりも1番に頭をよぎったのは「彼の遺言を守らねば」だった。
伏黒が高専を卒業した日、伏黒の住む部屋へと訪れた五条は祝いにと指輪を渡した。こんな明日が不安定な仕事で形に残るようなものを渡すのは愚かとしか言いようがないが、それでも何かを渡したかった。五条の愚かしいエゴだ。しかしそれを二つ返事で受け取った伏黒は薬指に嵌めたそれを撫でながら言った。
「俺が死んだら、絶対にこれ回収してくださいね」
「なんでよ、あげたんだから死んでも返品不可だよ」
「俺からの一世一代の愛の告白だと思って」
「返品が?」
「そうです」
五条から受け取ったそれを、安い蛍光灯の明かりに翳して伏黒は穏やかに微笑んでいた。死後の話なんてしているとは思えないほどに。
「まぁ、そうですね、よく煮て出汁を取るでもいいし、何かしらの方法で保存してもらうでもいいですし、庭先に埋めてくれるんでもいいです」
五条を置いてきぼりにして伏黒は淡々と言い切ると、それで満足したように翳していた手を降ろした。
「いまいち話が見えないんだけど」
「俺が死んだら分かりますよ。俺からの最大級の告白です」
指輪、ありがとうございます。伏黒はそう言ってまた大事そうに左手の薬指の付け根を撫でたのだった。
さて、彼は昔から言えない言葉の多い子供であった。今こうして、津美紀と違って永遠に目覚めない物言わぬ眠り姫となってしまったのも、助けての一言が言えないからだ。
少しづつ我儘を言えるように育ててきたつもりではあったけれど、それでも終ぞ伏黒が言えなかったのは助けてと、約束と、願いであった。明日デートしよう程度の約束すら言えず、これからの願いすら言えない子だった。そんな子が、あの日五条に伝えた遺言の意味をやっと知る。
「なるほどね。いじらしい事するじゃない」
伏黒の指から指輪が抜けることはなかった。
畳む