薄明

ごじょうさとる×ふしぐろめぐみ
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ひとりごと


 出会って13年ほど、うち付き合って5年ほど。最近になって五条さんが何をしたら喜ぶのか学んできた。正しくは学んだというより自信を得た、と言うべきか。これだけ長い付き合いがあれば味の好み、服の趣味、寝る前や朝のルーティンetc.大体のことは知っていく。それでもどこか「これなら喜ぶだろうか」と確信が持てなかったものが、ここ最近は「これは喜ぶな」に変わったのだ。
 振り返ってみれば俺が五条さんに何かしたことで不機嫌になることも本気で嫌がられることも殆どなかったのだが、それに気付くのにも同級生いわく鈍い俺は時間がかかった。いや、最初から実らないもんだと思っていて墓まで持っていこうとしていた気持ちなのだ。それが紆余曲折の末に実ったとて、素直に両手を上げてハッピーエンドおめでとうと喜べるだろうか。正直なことを言うと付き合えたのは何かの冗談かもしれないと思っていたのだが、初めて身体を重ねた日の朝に「もしかして俺のこと好きなんですか」と聞いたらちょっと泣かれて「鈍いのも限度があるよ」と言われて少し反省した。
 閑話休題。
 とにかく五条さんは甘いものが好きだし、服は大きなこだわりはないがシンプルなものを好む、寝る前と朝には1杯の水を飲むのが決まり。そして意外にも俺を困らすよりも、俺に困らされる方が好きだ。
 俺は元来いたずらなんて好む方ではないしやろうとも思わないが、それでもふとした思いつきで五条さんにされたいたずらをやり返すとそれはもう嬉しそうにするのだ。俺に面倒くさいお願いごとや我儘を言われても困った顔をしながら嬉しそうに仕方ないなぁと笑う。
 あの人が手慰みに俺の頬を揉むように、俺も五条さんの二の腕やら胸板やらの感触を楽しむ時があるのだが、ついこの間ちょっとした出来心で読書のお供にあの人の股間を掴んだ。何故股間かと言われれば、行為の最中にあの人が俺の下半身…竿より下の袋の方をやけに楽しそうに揉んでいたからだ。それがあまりにも楽しそうだったものだから、そんなに触り心地がいいのかと手が伸びた。窘められはしたものの結局本気で止められなかったのだが、なんだかんだで嬉しそうだった。
 以下は、時折俺にいたずらをされたり面倒な絡み方をされても嬉しそうな五条さんに理由を聞いた時の台詞だ。
『えぇ?そりゃ嬉しいよ。昔は絶対人には懐きません!みたいな顔してた子が、僕がNOと言わないのを分かってて我儘言って困らせてくるんだから可愛いったらないよね。まぁ恵のあまりの鈍さに泣いた日もあったけど、今となっては笑い話というか…なんなら今こうやって「面倒くさくないですか」て聞いてくるのすら堪んないね。恵がここまで成長するまで長かった。ネガティブになる度に僕が懇切丁寧にしつこいくらい恵のことが好きだって説明した甲斐があったというか…』
 以下省略。この後も長々と俺が如何に鈍くて、その度に如何に愛を説いたかを語られて再確認させられたのだがまた別の話だ。どうせなら逃がさず再びじっくり分からせようと、両手を掴まれながら話をひたすらに聞かされて「わーっ!」と叫び出さなかった俺は偉い。

 思い出しているとじわりと頬に熱が乗った。日が落ちるとまだまだ冷え込む。五条さんが来るのを待ちながらコートの襟に口元を埋めた。今日は五条さんと夕食を食べに行く予定なのだ。
「なーに難しい顔してんの」
「っ!」
 いつの間にか正面に来ていた五条さんに声をかけられて「わーっ!」と叫び出さなかった俺は偉い。脳内でぐるぐると振り返っていた俺は目の前に来ていたことにも気付かなかったらしい。変な汗が背中を伝う。
「やらしいこと考えてた?」
「なわけないでしょ」
「僕のこと?」
「……違うって言ったら?」
 「うそつけ!」と嬉しそうに笑った五条さんは俺の手を引いて元気よく歩き出した。今夜は中華だ。
 あの日、俺に長々と語った五条さんは最後に言った。
『とまぁ色々言ったけど、これからも気にせず恥ずかしがらずに我儘言って僕を困らせてね。』

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