薄明
ごじょうさとる×ふしぐろめぐみ
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明晰夢
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「恵、おきて」
その言葉に微睡んでいた意識が少しだけ持ち上がる。霞む視界に映る天井は真っ暗で、今が朝でも朝に近い時間でもないのは明らかだった。時計の秒針の音がいやに響く、不自然なくらいに静かな夜だった。
「めぐみ」
もう一度呼ばれて、ぼんやりと天井を見つめていた視線を動かす。首だけで声のした右側を向けば、伏黒の顔を覗き込むように五条の顔が近くにあった。ベッドの端に頬杖をついて、目隠しに覆われていても分かる穏やかな微笑みを湛えてこちらを見ていた。
「…せんせ」
寝起きの覚束無い舌を回して呼び返せば、よく見知った顔と仕草で「先生じゃないでしょ」と返される。2人きりの時には先生と呼ばないようにしていた筈なのに、寝ぼけた頭はそんないつもの約束すら忘れてしまうらしい。
触れたいのに、どうしてか触れてはいけない気がした。
「五条、さん」
違和感ばかりが付き纏う。2人しかいない部屋で外されない目隠し、じっとこちらを見つめるだけで触れようともしない五条、未だに朧気で曖昧な意識。そっちが人を起こしたくせにそれ以上は何も言わないのだって、おかしかった。
「…なんか、言ってくださいよ」
僅かに声が震えた。違和感に気付いてしまえば曖昧だった意識はくっきりと形を持ち始めて、それと同時に目の前にいる五条の姿が溶けていく。
あの微笑みも、起きてと名前を呼ぶ声も、伏黒の中にあるいつかの記憶を綺麗にそのまま写しただけの紛い物だったのだ。気付いてしまえば、記憶の中の都合よく生み出された五条はあっという間に影の中に溶けて消えてしまう。最後まで五条は伏黒に何も言ってくれなかった。それもそうだ。伏黒の記憶の中にはここから続く五条の言葉なんてないのだから。
「夢くらい、都合よくあってくれよ」
こんな夢、見たくなかった。朝が来るにはまだ時間があるのに。
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2023.09.07 14:30:55
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「恵、おきて」
その言葉に微睡んでいた意識が少しだけ持ち上がる。霞む視界に映る天井は真っ暗で、今が朝でも朝に近い時間でもないのは明らかだった。時計の秒針の音がいやに響く、不自然なくらいに静かな夜だった。
「めぐみ」
もう一度呼ばれて、ぼんやりと天井を見つめていた視線を動かす。首だけで声のした右側を向けば、伏黒の顔を覗き込むように五条の顔が近くにあった。ベッドの端に頬杖をついて、目隠しに覆われていても分かる穏やかな微笑みを湛えてこちらを見ていた。
「…せんせ」
寝起きの覚束無い舌を回して呼び返せば、よく見知った顔と仕草で「先生じゃないでしょ」と返される。2人きりの時には先生と呼ばないようにしていた筈なのに、寝ぼけた頭はそんないつもの約束すら忘れてしまうらしい。
触れたいのに、どうしてか触れてはいけない気がした。
「五条、さん」
違和感ばかりが付き纏う。2人しかいない部屋で外されない目隠し、じっとこちらを見つめるだけで触れようともしない五条、未だに朧気で曖昧な意識。そっちが人を起こしたくせにそれ以上は何も言わないのだって、おかしかった。
「…なんか、言ってくださいよ」
僅かに声が震えた。違和感に気付いてしまえば曖昧だった意識はくっきりと形を持ち始めて、それと同時に目の前にいる五条の姿が溶けていく。
あの微笑みも、起きてと名前を呼ぶ声も、伏黒の中にあるいつかの記憶を綺麗にそのまま写しただけの紛い物だったのだ。気付いてしまえば、記憶の中の都合よく生み出された五条はあっという間に影の中に溶けて消えてしまう。最後まで五条は伏黒に何も言ってくれなかった。それもそうだ。伏黒の記憶の中にはここから続く五条の言葉なんてないのだから。
「夢くらい、都合よくあってくれよ」
こんな夢、見たくなかった。朝が来るにはまだ時間があるのに。
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