薄明
ごじょうさとる×ふしぐろめぐみ
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付き合ってまだそんなに長くない頃
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今の僕は、まさしく鳩が豆鉄砲の顔をしている。
リビングから廊下に繋がる扉の前で真っ赤っかな顔をして立つ恵は、ロング丈の寝巻き用のシャツしか着ていなかったのだ。着ているのは本当にシャツだけで素肌を晒した足が少し寒そうだったけれど、始めて見る恵のそんな姿に僕は言葉を失っていた。どうしたのとか、寒そうだけどとか、もしかしてとか、色んな言葉が頭の中で浮かんでは消えて、そうしてやっと飛び出したのは抑えきれない笑い声だった。
「っ、ふ、…ははっ!もう、なんなのお前!育てた僕でも予想できないようなことして!驚かせてくれるじゃん!」
恵が静かに「お風呂いただきます」と告げてリビングから消えて1時間弱。普段の恵からしたらありえない長さだったが、ソファで次の任務資料を眺めていた僕は深く考えていなかった。 そんな恵が、真っ赤っかな顔で生脚を晒して僕の前に立っている。扉を開けて「五条さん」と僕を呼んだ時の消え入りそうな声といったら!ここまでされて恵の意図に気付かないほど僕は鈍くない。
「…なんか、すみませんでした」
「ちが…、待って待って!そうじゃなくて!」
あんまりにも僕が笑うもんだから馬鹿にされたと思った恵が、真っ赤な顔のままムスッとして再び廊下に消えそうになる。不器用な恵が頑張って僕を誘ってくれたのだ。馬鹿になんてするわけがない。だってあのちいさな「五条さん」の後には「今夜どうですか」って続けたかったに違いなくて、ただそれを言うところまで恵の勇気はちょっと足りなかっただけで。
慌ててソファから立ち上がり風呂場にUターンしそうな恵の腕を取る。顔は真っ赤でもその手は冷たい。恵からえっちに誘うなんて初めてだし、こんな格好を自分からするのも初めての筈だから本当は緊張していたのだろう。
不器用で、愛らしくて、いじらしくて仕方ない。
「………」
目を合わせられない恵が、ふいと顔ごと目線を逸らす。
「本当に違くてさ。すっごい嬉しいの」
「…爆笑してましたけど」
「だって恵が豆粒みたいにちっちゃい頃から面倒見てて、とっくに色んなこと知ってて、恵が考える大体のことも想像がつくのにさ、これは予想外だったから」
「…豆粒じゃない」
突っ込むところはそこじゃないのは恵だって分かってるだろうに、素直じゃない。また笑いそうになるけど今度は堪えた。
掴んだ恵の腕をそっと離してから、どこかに行ってしまう前に手のひらと手のひらで繋ぎ直す。
「まだまだ恵の知らないところがあって、予想もしないようなことで驚かせてくれて、喜ばせてくれて、嬉しいに決まってるじゃん」
恵の好きな味付けも知ってるし、当然好みの本や映画、服も知ってる。靴を履く時は必ず右足からだし、つむじは左巻き。恵の身体のことだって、まだ勉強中だけど既に本人よりは知ってるつもりだ。どこをどうされるのが弱いとか。しかしそれでも、世の中知らないことばっかりだ。風呂が長かったのは多分準備してたからで、脚を出してるのはきっと脱がせる手間と分かりやすさを考えてのこと。
新しく記憶してからまだそっぽを向いてる恵の顔を覗き込んで、繋いだ手を揺らす。
「ね、「五条さん」の続きは?」
続く言葉は今夜どうですか、だと僕は予想してるけれど何が飛び出してくるのか。わくわくしながら待つ。
けど、何が飛び出しても、僕の返答はもう決まってる。
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2025.12.18 02:22:55
小説
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付き合ってまだそんなに長くない頃
今の僕は、まさしく鳩が豆鉄砲の顔をしている。
リビングから廊下に繋がる扉の前で真っ赤っかな顔をして立つ恵は、ロング丈の寝巻き用のシャツしか着ていなかったのだ。着ているのは本当にシャツだけで素肌を晒した足が少し寒そうだったけれど、始めて見る恵のそんな姿に僕は言葉を失っていた。どうしたのとか、寒そうだけどとか、もしかしてとか、色んな言葉が頭の中で浮かんでは消えて、そうしてやっと飛び出したのは抑えきれない笑い声だった。
「っ、ふ、…ははっ!もう、なんなのお前!育てた僕でも予想できないようなことして!驚かせてくれるじゃん!」
恵が静かに「お風呂いただきます」と告げてリビングから消えて1時間弱。普段の恵からしたらありえない長さだったが、ソファで次の任務資料を眺めていた僕は深く考えていなかった。 そんな恵が、真っ赤っかな顔で生脚を晒して僕の前に立っている。扉を開けて「五条さん」と僕を呼んだ時の消え入りそうな声といったら!ここまでされて恵の意図に気付かないほど僕は鈍くない。
「…なんか、すみませんでした」
「ちが…、待って待って!そうじゃなくて!」
あんまりにも僕が笑うもんだから馬鹿にされたと思った恵が、真っ赤な顔のままムスッとして再び廊下に消えそうになる。不器用な恵が頑張って僕を誘ってくれたのだ。馬鹿になんてするわけがない。だってあのちいさな「五条さん」の後には「今夜どうですか」って続けたかったに違いなくて、ただそれを言うところまで恵の勇気はちょっと足りなかっただけで。
慌ててソファから立ち上がり風呂場にUターンしそうな恵の腕を取る。顔は真っ赤でもその手は冷たい。恵からえっちに誘うなんて初めてだし、こんな格好を自分からするのも初めての筈だから本当は緊張していたのだろう。
不器用で、愛らしくて、いじらしくて仕方ない。
「………」
目を合わせられない恵が、ふいと顔ごと目線を逸らす。
「本当に違くてさ。すっごい嬉しいの」
「…爆笑してましたけど」
「だって恵が豆粒みたいにちっちゃい頃から面倒見てて、とっくに色んなこと知ってて、恵が考える大体のことも想像がつくのにさ、これは予想外だったから」
「…豆粒じゃない」
突っ込むところはそこじゃないのは恵だって分かってるだろうに、素直じゃない。また笑いそうになるけど今度は堪えた。
掴んだ恵の腕をそっと離してから、どこかに行ってしまう前に手のひらと手のひらで繋ぎ直す。
「まだまだ恵の知らないところがあって、予想もしないようなことで驚かせてくれて、喜ばせてくれて、嬉しいに決まってるじゃん」
恵の好きな味付けも知ってるし、当然好みの本や映画、服も知ってる。靴を履く時は必ず右足からだし、つむじは左巻き。恵の身体のことだって、まだ勉強中だけど既に本人よりは知ってるつもりだ。どこをどうされるのが弱いとか。しかしそれでも、世の中知らないことばっかりだ。風呂が長かったのは多分準備してたからで、脚を出してるのはきっと脱がせる手間と分かりやすさを考えてのこと。
新しく記憶してからまだそっぽを向いてる恵の顔を覗き込んで、繋いだ手を揺らす。
「ね、「五条さん」の続きは?」
続く言葉は今夜どうですか、だと僕は予想してるけれど何が飛び出してくるのか。わくわくしながら待つ。
けど、何が飛び出しても、僕の返答はもう決まってる。
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