薄明
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星の原
柊英です
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星の原
ユニットとしては先輩である大がステージの上で歌っている。その歌声に聞き惚れながらも足が竦む。この歌が終わったら入れ替わるようにしてステージへと向かわねばならない。果たして自分は彼のように堂々とステージに立ち歌うことができるだろうか。舞台袖に聴こえる歌声に、マイクを持つ手が震えた。
やがて曲が終わり、ステージに歓声が響く。
「…よし」
それを聴いて、竦む足を叱咤して壇上へと続く階段を上がっていく。英知と入れ違うように僅かに額に汗を滲ませた大が降りてきた。次の曲までそう時間もない中で、大が英知の顔を見て小さく笑った。
「大丈夫。行ってみたら、ステージって案外怖くない」
曲が終わり、ふと視界を持ち上げた時、きらきらと世界が瞬いていた。イエローグリーンのペンライトが夜闇に散りばめられた星々の様で、宝石のようで、その美しさに息を飲む。今、この光は英知の為に光り輝き英知を讃えている。大袈裟な仕草で頭を下げて、ありがとうございましたと言った声はきっと震えていた。広い会場からちらほらとざわめく声が聞こえたから。
柊羽が作ってくれた、英知の為の歌。QUELLというこの場所を家族のように想っている、それを美しく形にしてくれた歌だ。みんなの様に上手く歌えた自信なんてない。声は裏返ってしまったしリズムだって崩れてたに違いない。それでも歌っていたあの瞬間は誰よりも1番楽しい幸せな時間であったのは確かだ。壇上に立ちイントロが流れてからの記憶は緊張も相まってどこかふわふわとしていてはっきりしないけれど、それだけは分かる。柊羽が作った、このQUELLという家族を想う、英知のための歌。ああ、と大きく息を吸う。もう一度頭を上げた時に未だに広がっていたイエローグリーンの世界が滲む。もう一度頭を下げて舞台袖に下がる足取りだって少し震えていた。
次にソロを歌う壱流が英知と入れ替わるようにステージへと消えていく。その背中を見送る余裕すらなかった。英知の背後でわぁっと歓声が上がる。やがて流れ始めるイントロ、そこに重なる壱流の歌声。
「英知」
優しい声が壱流の伸びやかな歌声の合間を縫って英知の耳へと届く。どこか呆然とした頭で見遣ればそこには柊羽が立っていた。きっと、英知のステージを見ていたのだ。視界がどうしようもなく滲んで、息を吸い込む、それすら震えてしまった。きらきらと世界が瞬いていた。イエローグリーンの美しい星々が英知を讃えていた。堀宮英知という人間を、確かに受け入れ認め、見つめていた。QUELLの堀宮英知として、柊羽や壱星や壱流からではない数多の人からやっと認めてもらったような気すらした。なんて美しい光景だっただろう、QUELLの堀宮英知だけが見ることの許された星の原は。
柊羽、と名前を呼ぶ声は形にならなかった。壱流のソロが終わったら次はSolidSが歌う。その僅かな時間に少しくらい泣いてもいいだろうか。本当は泣いている場合なんかじゃあないのだけど、それでもどうしようもなかった。覚束ない足取りで両手を広げた柊羽の腕の中に収まれば壱流の歌声がすっと遠のく。
「英知、英知。本当にお疲れ様。本当に素晴らしいステージだったよ」
何度も自分の名前を呼ぶ柊羽の声は酷く優しい。ああ、QUELLになれて良かったとこんなにも心の底から思っているのに声になんてなりやしない。ただただ柊羽を抱きしめ返す腕に力だけが込められる。この腕で柊羽にたくさんの感謝が伝わっていれば、いいのだけど。
瞼の裏で、世界で1番美しい星の原が広がっていた。英知だけが見ることの許された、英知だけの美しさだ。
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2026.01.09 02:59:01
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ユニットとしては先輩である大がステージの上で歌っている。その歌声に聞き惚れながらも足が竦む。この歌が終わったら入れ替わるようにしてステージへと向かわねばならない。果たして自分は彼のように堂々とステージに立ち歌うことができるだろうか。舞台袖に聴こえる歌声に、マイクを持つ手が震えた。
やがて曲が終わり、ステージに歓声が響く。
「…よし」
それを聴いて、竦む足を叱咤して壇上へと続く階段を上がっていく。英知と入れ違うように僅かに額に汗を滲ませた大が降りてきた。次の曲までそう時間もない中で、大が英知の顔を見て小さく笑った。
「大丈夫。行ってみたら、ステージって案外怖くない」
曲が終わり、ふと視界を持ち上げた時、きらきらと世界が瞬いていた。イエローグリーンのペンライトが夜闇に散りばめられた星々の様で、宝石のようで、その美しさに息を飲む。今、この光は英知の為に光り輝き英知を讃えている。大袈裟な仕草で頭を下げて、ありがとうございましたと言った声はきっと震えていた。広い会場からちらほらとざわめく声が聞こえたから。
柊羽が作ってくれた、英知の為の歌。QUELLというこの場所を家族のように想っている、それを美しく形にしてくれた歌だ。みんなの様に上手く歌えた自信なんてない。声は裏返ってしまったしリズムだって崩れてたに違いない。それでも歌っていたあの瞬間は誰よりも1番楽しい幸せな時間であったのは確かだ。壇上に立ちイントロが流れてからの記憶は緊張も相まってどこかふわふわとしていてはっきりしないけれど、それだけは分かる。柊羽が作った、このQUELLという家族を想う、英知のための歌。ああ、と大きく息を吸う。もう一度頭を上げた時に未だに広がっていたイエローグリーンの世界が滲む。もう一度頭を下げて舞台袖に下がる足取りだって少し震えていた。
次にソロを歌う壱流が英知と入れ替わるようにステージへと消えていく。その背中を見送る余裕すらなかった。英知の背後でわぁっと歓声が上がる。やがて流れ始めるイントロ、そこに重なる壱流の歌声。
「英知」
優しい声が壱流の伸びやかな歌声の合間を縫って英知の耳へと届く。どこか呆然とした頭で見遣ればそこには柊羽が立っていた。きっと、英知のステージを見ていたのだ。視界がどうしようもなく滲んで、息を吸い込む、それすら震えてしまった。きらきらと世界が瞬いていた。イエローグリーンの美しい星々が英知を讃えていた。堀宮英知という人間を、確かに受け入れ認め、見つめていた。QUELLの堀宮英知として、柊羽や壱星や壱流からではない数多の人からやっと認めてもらったような気すらした。なんて美しい光景だっただろう、QUELLの堀宮英知だけが見ることの許された星の原は。
柊羽、と名前を呼ぶ声は形にならなかった。壱流のソロが終わったら次はSolidSが歌う。その僅かな時間に少しくらい泣いてもいいだろうか。本当は泣いている場合なんかじゃあないのだけど、それでもどうしようもなかった。覚束ない足取りで両手を広げた柊羽の腕の中に収まれば壱流の歌声がすっと遠のく。
「英知、英知。本当にお疲れ様。本当に素晴らしいステージだったよ」
何度も自分の名前を呼ぶ柊羽の声は酷く優しい。ああ、QUELLになれて良かったとこんなにも心の底から思っているのに声になんてなりやしない。ただただ柊羽を抱きしめ返す腕に力だけが込められる。この腕で柊羽にたくさんの感謝が伝わっていれば、いいのだけど。
瞼の裏で、世界で1番美しい星の原が広がっていた。英知だけが見ることの許された、英知だけの美しさだ。
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