薄明

ごじょうさとる×ふしぐろめぐみ
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炬燵とアイスと珈琲とお誘いと
柊英です


 炬燵にみかん、というのがやはり冬の定番であろう。しかし残念なことにみかんは数日前に食べ尽くしてしまってなくなってしまった。なかなか買いに行くタイミングもなく、だからといって誰かの寮へと赴いてまで欲しいかと問われればそんなわけもなく。そうして英知と柊羽が足を突っ込んだ炬燵の上にはみかんの代わりにコンビニで買ってきたアイスと英知の入れた珈琲の入ったマグカップが置かれていた。冬に食べるアイスも美味しいものだ。これはこれで良い。
「炬燵も、あのソファに負けず劣らず人を駄目にするな」
 頭にかの有名な人を駄目にするというソファを思い浮かべ、小さく息をつく。先程までアイスのカップを持っていた手を炬燵の中に潜り込ませればじんわりと温もりが柊羽の手を包んだ。ただ暖かいだけなのにどうしてこうも動くことが億劫になって、気持ちまでゆっくりしてしまうのか。
「ふふ、炬燵ってすごいよねぇ。あの柊羽がこんなにダラダラしてる」
「英知だって人のことは言えないだろう」
 柊羽の斜め右にいる英知は天板に右頬を押し付けて両手も布団の中に潜り込ませて、目を閉じてしまえばそのまま今にも穏やかに寝息を立ててしまうんじゃないかという程に目は蕩けている。つくづく、炬燵は魔性のアイテムだ。英知の正面、柊羽から見て斜め左にいる壱星と壱流を見て思う。柊羽と英知が取り留めもなくだらけて過ごしている間にすっかり二人並んで寝入ってしまっていた。
「だって、つい眠くなっちゃう」
 くあ、と欠伸をした英知が口元を緩く持ち上げながら目を閉じる。柊羽の手足を温める炬燵の温度は、同様に英知の手足を包んで眠りへと誘う。そのあんまりにも幸せそうな姿に湧き上がった悪戯心に素直に従って柊羽は手を伸ばした。
「英知」
 中身の見えない炬燵の中に手を更に潜り込ませて、英知の手を見つける。芯まで温まっている手と柊羽の手の温度はさして変わらず、触れた所から境目が曖昧になっていく。英知の左手を取り、そこに指を絡ませていく。気まぐれに指先で手の甲を撫で、気まぐれに爪先で手のひらの皺をなぞっていけば、閉じられた英知の瞼が震えた。
「英知」
 どれほどそうしていたかは分からないが、好きなだけ英知の手を堪能してからもう一度名前を呼んで英知の手を強く握り込む。
 じわじわと英知の耳が染まって、眉間に小さく皺が寄って、口元も噛み締めるように引き結ばれていた。
「…誤魔化すのが下手だな」
「…柊羽、絶対にやにやしてる」
「してないよ」
 頬まで染まり始めた顔を隠すようにうつ伏せになった英知がくぐもった声で非難めいたことを言うが、英知から柊羽の顔が見えないのをいいことにとぼけてみせる。
「…ていうか、そういう誘いをするなら2人がいない時にしてください」
「2人がいなければ、好きに誘っていいのか」
「…ノーコメント」
「っはは、じゃあ好きに受け取らせてもらおうかな」
 握り込んでいた手が確かに熱くなる感覚に、柊羽が満足げに微笑んでいたことを英知は知らない。和泉柊羽という男は、嫉妬深いのだ。


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