薄明

ごじょうさとる×ふしぐろめぐみ
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天国で聴く音
柊英です


 柊羽が緩く微笑みながらピアノの鍵盤に指を置く。深夜2時をとっくに過ぎたピアノ室には誰もおらず、窓から差し込む月明かりと英知だけがこれから柊羽が弾く音楽を聴こうとしている。
 真っ白になりそうな視界の中で、必死になって柊羽の背中にしがみついた。頭の中がふわふわして、身体が宙に浮くような気がして、目の前にある柊羽の背中に腕を回さないとどうにかなりそうだったのだ。うわ言の様に何度も柊羽の名前を呼んで、そうして眼前にあったその首筋に思わず吸い付いた理由は今となっては分からない。ただただ夢中になって、馬鹿になりそうな頭でやったことに意味なんてそもそもないのかもしれないけれど。
「どんなの弾くの?」
「そうだな…」
 ピアノの横に置かれた椅子に腰掛けても鈍く痛む腰はつい数時間前までの情事の激しさを物語っているけれど、お互い若いのだ。少しは羽目を外すことだってある。その羽目を外した勢いで軽くシャワーを浴びただけの身体でピアノ室に潜り込むことだって、ある。
 ベッドにぐったりと沈みこんだ英知の髪を撫でながら「なんだかいいフレーズが浮かびそうだ」と少し眉を下げて笑った柊羽に、じゃあピアノ室に行こうよ持ちかけたのは英知だ。明日になったらきっと柊羽の中に浮かんだ音楽は消えてしまう、そんな確信があった。
「きっとこれは、QUELLの新曲には出来ないな」
 そう言ってから鍵盤に乗せられていた指が動き出す。
 これだけ人の多い寮だ。どんな時間でも誰が起きてるか、起き出すか、そんなの分からない。そう言って柊羽が着たタートルネックの下にあるものを思い出し気恥しさと共に少しの優越感。そして欲。
 柊羽の指先が奏でるものに耳を傾けながら、月明かりに透けてしまいそうな横顔を見つめる。こんなに綺麗な人が、自分のものになればいいのに、なんて。口に出せば「もう英知のものだよ」なんて軽く言ってのけるのだろうが、きっとそれじゃあ足りない。いつまでもいつまでも英知は同じことを想うのだ。
「…確かに、これは表に出せないや」
「そうだろう?」
 柊羽が悪戯げに笑う。それに笑顔を返しながら応える。
「だって俺宛のラブソングだもん」

 
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