薄明

ごじょうさとる×ふしぐろめぐみ
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時の小瓶
柊英です


 まだ春と呼ぶには早いこの時期、桜はまだ咲いていないがその代わりと言わんばかりに旅館の窓から覗く空にはぽつぽつと梅が花を見せていた。
「じゃあ俺らちょっと外行ってくる」
「行ってきます」
「はーい。いってらっしゃい」
 写真を撮りに行きたい、そう言った壱星とそれについて行く形で部屋を出ていった壱流を見送ってしまえば部屋には柊羽と英知だけになる。2人きりになった途端に部屋は大人しくなるが、決して嫌な静けさではない。窓から覗く空と梅を眺めながら、ゆっくりお茶を飲む姿は少し年寄りっぽいとは思うけれど。
「そういえば、この間ちょっと花言葉調べてみたんだけど」
「梅の?」
「うん。紅い梅の花言葉って、優雅な人って意味があるんだって。なんだか柊羽っぽいなーって」
 英知の言葉にそうかなと小さく笑った柊羽は、確かに梅の言葉がよく似合った。本人からしたらいまいち納得はできないのだろうけど、他人からの評価はだいたいそんなものだ。だからこそ、何度も同じことを伝えてしまうのだけど。
「そうだよ。柊羽が思ってるより、柊羽って結構優雅な感じしてるよ」
「優雅な感じ…いまいち実感がないな」
「だよねぇ。そんな顔してる」
 いつもより時間がゆっくりと進んでいる気がする。時計の針はいつも同じ速度の筈なのに、どうしてだかそれすらもゆっくりに感じるのだ。
「……ふふ、今日は早めに現場入りしてよかったね」
 撮影自体は夕方からなのもあって、まだ空が青いこの時間は束の間の休息だ。夕暮れと梅とで写真を撮りたいと言った監督に感謝しないといけないな、と思う。
「ああ。たまには花でも見ながらゆっくりするのもいい」
「ね。梅っていうのもちょっと新鮮かも」
 ぽつりぽつりと他愛のない話をするだけの静かな時間は心地よく、少しの特別感もくれる。いつか歳をとっておじいちゃんになったら、縁側でこうして過ごすのも悪くないかもしれない。なんて。

 
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