薄明

ごじょうさとる×ふしぐろめぐみ
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よしよしわふわふ
ぶっちゃけ忙しすぎて見合いとか実家に呼ばれるとかそんな暇なさそう

 動物は意外と頭を撫でられるのが好きだ。これを正しい動物と言っていいのかは分からないが、少なくとも伏黒が呼び出す玉犬は撫でてやれば気持ちよさそうに目を細めるし、脱兎も頭に手を乗せてやれば溶けたように床に伏せる。そんな姿をよく見ていたからか、深い意味はなくともよく伏黒は呼び出した動物達になるべく触れてやるようにしていた。嬉しそうにするものだから。


「…先生」
 今日の授業が一通り終わって、心地よい疲労感を抱えて自室に戻ろうとした時だった。今日一日、出張でもないのに予定があると言って姿を見せなかった五条がいた。生徒寮と校舎を繋ぐ渡り廊下で、校舎側に五条はいた。横目に一瞬見えた五条はいつもの軽快な足取りではなくて、それがどうにも気にかかる。いつもの目隠しをせずサングラスなのも、ワイシャツなんか着ているのも、その要因かもしれない。寮に戻ろうとしていた足を反対に向けて、校舎へと伏黒は向かった。
「先生」
 もう一度名前を呼べば、廊下を少し進んでいた五条がこちらを向く。オレンジ色の夕陽の中でこちらを見た五条はやはり元気がなかった。元気がない、というよりは疲れているような。げんなりしているというような。
 五条がこんな顔(と言ってもサングラスで半分見えていないからほぼ勘なのだが)をしている時は実家に呼ばれた時だ。五条がやることに口は出さないが、跡継ぎについては口を出すのだと言っていた。あちらからしたら今現在無下限と六眼を持つ五条悟に後継ぎを作ってもらいたいのだろうが、五条からしたらそんなものは他の五条家の血筋にやらせとけ、らしい。術式は血筋とはいえ、五条悟の子供イコール全く同じではないのだから、と。しかし押し問答はなかなか終わらず、たまに忘れた頃に五条はお小言に呼ばれるのだった。
 振り向いたきり動きもしない五条の元へと向かえば、拗ねたように口を尖らせた五条が「恵」と名前を呼ぶ。流石に伏黒と付き合っているだとか口走ってはいないだろうが、今日もまたこの押し問答は終わらなかったらしい。
「まじでうざったい」
「…まぁ、向こうの気持ちも分かりますけど」
「…恵は僕がどっかの誰かと子供作ってもいいの?」
「そういうことじゃなくて。分かるってだけで俺は嫌ですよ」
 五条が呼び出されて、それに伏黒が気付いた時に毎回するやり取り。うんざりしている五条が子供みたいな事を言うから宥めるためにも「嫌ですよ」と返す。一応本当に嫌だとは思っているから、宥めるための言葉ではあるものの方便などでは無い。
 伏黒がそう言うと五条のとんがった唇は引っ込むのだ。
 そうして引っ込んだら、次は手を伸ばしてその白い頭を撫で回してやる。犬にするみたいに、わしわしと撫で回してやれば機嫌が悪かった筈の五条の表情が和らいでいく。犬も兎も動物は撫でられることが好きだ。撫でられると気持ちよさそうに目を細めて、嬉しそうに身を委ねる。
「っ、ふふ、…ボサボサになっちゃうよ」
「機嫌直りました?」
「何でうんざりしてたか、忘れちゃった」
「なら良し」
 五条の機嫌がすっかり戻ったのを確認して手を離せば、髪がぐちゃぐちゃになったのを直そうともしないで伏黒の身体に腕を回してくる。それを跳ね除けるでもなく受け入れれば、あっちこっちに跳ねた髪がくすぐったかった。誰が来るともしれない廊下だが、あんな大きな犬があんな様子で歩いているのを見て放置するなんて、邪険にするなんて、伏黒には出来ないのだ。

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