薄明
ごじょうさとる×ふしぐろめぐみ
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伏黒姉弟の住んでたアパートのこと、勝手に取り壊されてると思って書いてる
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「恵、髪伸びた?」
「髪?…ああ、最近切ってないですね」
そこが自分の場所とでもいうように伏黒の頭に自身の顎を乗せた五条を押し退けながら、最後に髪を切ったのはいつか思い出そうとする。邪魔になってきたら、思い出したら、そんな思い付きで切りに行くものだから正確には思い出せないが少なくともここ数ヶ月は行っていなかった。言われてみれば前髪が視界によくちらつくようになっている気がするし、そろそろ切った方がいいのかもしれない。
そんなことを思っていると、伏黒のよく跳ねる髪を摘んで引っ張りながら五条が言う。
「久しぶりに僕が切ってあげよっか」
「は?」
思わず五条の顔を見上げると、目隠し越しでも分かるくらい楽しそうに「任せて!」と言った。
____
「絶対事故は起こさないでくださいよ」
「刺さないって」
「そっちじゃなくて」
断る前にあれよあれよと五条の部屋に連れていかれた伏黒は、風呂場で首にタオルを巻き付けられて椅子に座らされていた。大きな鏡の前に、五条の言った通り少し髪の伸びた自身が映る。その後ろに立つ五条は目隠しを外したラフな部屋着姿で、急に時間が戻ったような感覚になる。
最後に五条が髪を切ってくれたのは小学6年生の時だった。狭いアパートの狭い浴室に、もう身体の大きくなり始めた伏黒と津美紀とが順番に五条と一緒に入っては髪を切ってもらっていたのだ。年々浴室は窮屈になって、最初は適当でいいなんて言っていたのに何時しかリクエストするようになって。本当は1人で床屋くらい行けたのに、五条がやめるまで言い出さなかったのは髪を梳く手が存外好きだったからだった。
「イメチェンとかしちゃう?」
鏡越しににやりと笑った五条が指で作った鋏を前髪に差し込んで、額が見える位の長さで閉じる。
「絶対やめてくださいね」
「冗談冗談」
ぱっと指を離して今度は本物の鋏を取り出す。持ち手が少し茶色く褪せたそれには見覚えがあった。
「……それ、まだ持ってたんですか」
「まぁね、他にも色々あるよ。アパート取り壊される時に一応全部持ってきたからさ」
五条が2人の髪を切る時に決まって使っていた梳き鋏でまずはひと房。しゃきりと軽い音がして、タオルを巻かれた伏黒の肩と風呂場のタイルに落ちていく。
伏黒が中学卒業と同時に家を出ると決まった頃、あのアパートは老朽化を理由に取り壊しが決まった。その時に五条が勝手に全ての荷物をまとめて運んでくれていたのだ。片付けするなら津美紀も一緒じゃないとね、なんて言って。
次にこうして2人の髪を切ってもらえて、荷物の整理が出来るのはいつになるのだろう。そんなことを考えた。
「こら、暗いこと考えてんじゃないよ」
「…そんなんじゃ、」
知らず視線が足元へと落ちていた伏黒の顎を取り、上向かせられる。持ち上げられた顔はそのまま背後にいる五条へと向けられ、少し短くなった前髪越しに五条と目が合う。
キスをされる、そう思った頃にはもう触れていた。
「ん、丁度いい長さになった」
「…キスで長さ測らないでくださいよ」
触れるだけであっさりと離れて少し寂しくないと言えば嘘になる。しかし五条の優しさにそんな寂しさは途端に足元に散らかる髪と同じになってしまった。
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2023.09.07 14:17:48
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伏黒姉弟の住んでたアパートのこと、勝手に取り壊されてると思って書いてる
「恵、髪伸びた?」
「髪?…ああ、最近切ってないですね」
そこが自分の場所とでもいうように伏黒の頭に自身の顎を乗せた五条を押し退けながら、最後に髪を切ったのはいつか思い出そうとする。邪魔になってきたら、思い出したら、そんな思い付きで切りに行くものだから正確には思い出せないが少なくともここ数ヶ月は行っていなかった。言われてみれば前髪が視界によくちらつくようになっている気がするし、そろそろ切った方がいいのかもしれない。
そんなことを思っていると、伏黒のよく跳ねる髪を摘んで引っ張りながら五条が言う。
「久しぶりに僕が切ってあげよっか」
「は?」
思わず五条の顔を見上げると、目隠し越しでも分かるくらい楽しそうに「任せて!」と言った。
____
「絶対事故は起こさないでくださいよ」
「刺さないって」
「そっちじゃなくて」
断る前にあれよあれよと五条の部屋に連れていかれた伏黒は、風呂場で首にタオルを巻き付けられて椅子に座らされていた。大きな鏡の前に、五条の言った通り少し髪の伸びた自身が映る。その後ろに立つ五条は目隠しを外したラフな部屋着姿で、急に時間が戻ったような感覚になる。
最後に五条が髪を切ってくれたのは小学6年生の時だった。狭いアパートの狭い浴室に、もう身体の大きくなり始めた伏黒と津美紀とが順番に五条と一緒に入っては髪を切ってもらっていたのだ。年々浴室は窮屈になって、最初は適当でいいなんて言っていたのに何時しかリクエストするようになって。本当は1人で床屋くらい行けたのに、五条がやめるまで言い出さなかったのは髪を梳く手が存外好きだったからだった。
「イメチェンとかしちゃう?」
鏡越しににやりと笑った五条が指で作った鋏を前髪に差し込んで、額が見える位の長さで閉じる。
「絶対やめてくださいね」
「冗談冗談」
ぱっと指を離して今度は本物の鋏を取り出す。持ち手が少し茶色く褪せたそれには見覚えがあった。
「……それ、まだ持ってたんですか」
「まぁね、他にも色々あるよ。アパート取り壊される時に一応全部持ってきたからさ」
五条が2人の髪を切る時に決まって使っていた梳き鋏でまずはひと房。しゃきりと軽い音がして、タオルを巻かれた伏黒の肩と風呂場のタイルに落ちていく。
伏黒が中学卒業と同時に家を出ると決まった頃、あのアパートは老朽化を理由に取り壊しが決まった。その時に五条が勝手に全ての荷物をまとめて運んでくれていたのだ。片付けするなら津美紀も一緒じゃないとね、なんて言って。
次にこうして2人の髪を切ってもらえて、荷物の整理が出来るのはいつになるのだろう。そんなことを考えた。
「こら、暗いこと考えてんじゃないよ」
「…そんなんじゃ、」
知らず視線が足元へと落ちていた伏黒の顎を取り、上向かせられる。持ち上げられた顔はそのまま背後にいる五条へと向けられ、少し短くなった前髪越しに五条と目が合う。
キスをされる、そう思った頃にはもう触れていた。
「ん、丁度いい長さになった」
「…キスで長さ測らないでくださいよ」
触れるだけであっさりと離れて少し寂しくないと言えば嘘になる。しかし五条の優しさにそんな寂しさは途端に足元に散らかる髪と同じになってしまった。
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