薄明
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柊英です
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「それが原作か」
柊羽の言葉に手元の漫画に落としていた顔を上げる。手にはサンドイッチとおにぎりが乗った皿をそれぞれ持っていて、そこでやっと小腹が空いていたことに気付く。きゅうと小さく鳴った腹の虫が答えだ。
「そう。これを俺が演じるのかと思うとちょっと気恥しいかも。甘酸っぱくて」
ちらりと読んでいたページを確認してからコミックを閉じれば、少女漫画らしい可愛らしい表紙が顕になる。最近若い子に人気だという少女漫画の実写映画化。その映画の主演、とまではいかないが主人公の女の子の友人役としてオファーされたのだ。英知は彼女と結ばれる役ではないが、それでもこの本の中で広がる人々の世界はちょっと眩しくて気恥しい、けれど懐かしい青春を思い出させる甘酸っぱさがあった。この世界に馴染めるだろうか、そんなことも少しだけ考える。
手にしていた皿を置いた柊羽が英知からそっと本をさらっていく。柊羽に少女漫画、ミスマッチな組み合わせに小さく笑う。この世には柊羽と組み合わせるにはミスマッチな物が案外多い。シンプルな塩おにぎりに、シンプルなレタスとハムの挟まれたサンドイッチだとか。
柊羽がこれを用意して来たということは、きっと壱星と壱流もそのうち共有ルームにやってくるだろう。誰かが呼ばなくても自然と小腹が空けばやってくるのだ。
「確かに、眩しいくらいピュアなラブストーリーだな」
「ね。俺こんな青春したことないなぁ。こことかさ、学生の時ちょっと憧れたな」
ぱらぱらとページを流していた時にふと見えたワンシーン。主人公が雨の日に、好きな彼の差した傘の裏でキスをするのだ。雨の音が全ての音をかき消して、視界を曖昧にして、ちょっと背中が濡れたってそんなことは気にせず傘を傾けて隠れるようにキスをする。まさしく創作の世界でしか見ないようなワンシーンだが、だからこそ少し憧れる。流石にこの歳じゃあ出来ないけれど。
「…なるほど、じゃあ今度雨が降ったら2人で出掛けるか」
「流石に怒られるので駄目です」
「少しくらいは?」
「駄目」
「…手厳しいな」
本を閉じた柊羽が肩を竦めて笑う。決して本気のやり取りじゃない、ちょっとしたおふざけ。けれどこのやり取りが擽ったくて好きだ。
すっかり大人になって、やっていい事と悪い事を知ってしまって、出来ることと出来ないことを知ってしまって、だからこそこうやって言葉でおふざけをして遊ぶ。子供みたいで、しかし大人になった証拠のようだった。
「ふふ、いいね。傘に隠れてキスは出来ないけど、こういう会話ができるのって」
なんだか別の甘酸っぱさがある。そう言えば柊羽はそうだなと笑ってから英知に本を返した。返ってきた表紙では可愛らしい女の子がかっこいい男の子と手を繋いでいた。
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2026.01.09 23:06:28
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柊英です
「それが原作か」
柊羽の言葉に手元の漫画に落としていた顔を上げる。手にはサンドイッチとおにぎりが乗った皿をそれぞれ持っていて、そこでやっと小腹が空いていたことに気付く。きゅうと小さく鳴った腹の虫が答えだ。
「そう。これを俺が演じるのかと思うとちょっと気恥しいかも。甘酸っぱくて」
ちらりと読んでいたページを確認してからコミックを閉じれば、少女漫画らしい可愛らしい表紙が顕になる。最近若い子に人気だという少女漫画の実写映画化。その映画の主演、とまではいかないが主人公の女の子の友人役としてオファーされたのだ。英知は彼女と結ばれる役ではないが、それでもこの本の中で広がる人々の世界はちょっと眩しくて気恥しい、けれど懐かしい青春を思い出させる甘酸っぱさがあった。この世界に馴染めるだろうか、そんなことも少しだけ考える。
手にしていた皿を置いた柊羽が英知からそっと本をさらっていく。柊羽に少女漫画、ミスマッチな組み合わせに小さく笑う。この世には柊羽と組み合わせるにはミスマッチな物が案外多い。シンプルな塩おにぎりに、シンプルなレタスとハムの挟まれたサンドイッチだとか。
柊羽がこれを用意して来たということは、きっと壱星と壱流もそのうち共有ルームにやってくるだろう。誰かが呼ばなくても自然と小腹が空けばやってくるのだ。
「確かに、眩しいくらいピュアなラブストーリーだな」
「ね。俺こんな青春したことないなぁ。こことかさ、学生の時ちょっと憧れたな」
ぱらぱらとページを流していた時にふと見えたワンシーン。主人公が雨の日に、好きな彼の差した傘の裏でキスをするのだ。雨の音が全ての音をかき消して、視界を曖昧にして、ちょっと背中が濡れたってそんなことは気にせず傘を傾けて隠れるようにキスをする。まさしく創作の世界でしか見ないようなワンシーンだが、だからこそ少し憧れる。流石にこの歳じゃあ出来ないけれど。
「…なるほど、じゃあ今度雨が降ったら2人で出掛けるか」
「流石に怒られるので駄目です」
「少しくらいは?」
「駄目」
「…手厳しいな」
本を閉じた柊羽が肩を竦めて笑う。決して本気のやり取りじゃない、ちょっとしたおふざけ。けれどこのやり取りが擽ったくて好きだ。
すっかり大人になって、やっていい事と悪い事を知ってしまって、出来ることと出来ないことを知ってしまって、だからこそこうやって言葉でおふざけをして遊ぶ。子供みたいで、しかし大人になった証拠のようだった。
「ふふ、いいね。傘に隠れてキスは出来ないけど、こういう会話ができるのって」
なんだか別の甘酸っぱさがある。そう言えば柊羽はそうだなと笑ってから英知に本を返した。返ってきた表紙では可愛らしい女の子がかっこいい男の子と手を繋いでいた。
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