薄明

ごじょうさとる×ふしぐろめぐみ
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夢でも逢えやしない
柊英です


 植物園を貸し切っての撮影。そう雑誌の後ろに載っている編集後記には書いてあった。その文字の通り、雑誌の表紙に起用されていた柊羽は緑の中に凛と立っていたし、ぱらりと捲った中にも緑の中で微笑む柊羽の姿がいくつもあった。本当に、実に絵になる。ただ立っているだけでもう彼はひとつの特別になっていた。
 その雑誌を小脇に抱えて、本来買う予定だったコミックスの新刊を何冊か手に取ってレジへと向かう。この手に取った漫画本がいつ落ち着いて読めるのか、それはちょっと分からないが柊羽の載ったこの雑誌はいの一番に読むに違いなかった。
 
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 僅かな昼休みに本屋に駆け込んだおかげで少しも落ち着いて昼食にはありつけなかったが、その日は珍しく仕事が早めに終わった。と言ってもごく一般的なサラリーマンからしたら随分と遅い帰宅であることに変わりはないのだけど。けれどADとはそういうものだと思うし、この生活が楽しいのだから何も問題も文句もない。
 ただ、それなのに僅かばかり気分が晴れないのはどうしてだろうか。コンビニで買ってきた安い缶ビールと値下げされた惣菜、昼休みに買った雑誌達を疲れた腕で乱雑に置きながら考える。
(まぁ、理由とか分かってるけど)
 自分が和泉柊羽と友人であることが不思議でならない。どうしてこう気軽にメッセージのやりとりができて、会話もできて、時間が合えば食事にだって行けるのだろうか。案外和泉柊羽という人間は見た目に反して気さくで話しやすい。先に声をかけてきたのも向こうからであったし、だからこそ、こうやって柊羽が雑誌の表紙なんかにいると忘れかけていたことを思い出してしまうのだ。
 彼はこうやって植物園を貸し切って雑誌の表紙を飾る人間だし、来週には彼が出演するドラマに番宣もある。どこかのブランドの広告もしていただろうか。
 英知と柊羽は、住んでいる世界があんまりにも違いすぎるのだ。
(…そりゃ、酔いたい日もあるよね)
 元からどうにかなるつもりも、どうにかなれるとも思ってはいなかったが、ふと現実を見てはやり場のない気持ちを持て余していた。友人としても、勝手に想っているにしても、彼はあんまりにも遠い世界の人間だった。

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