薄明

ごじょうさとる×ふしぐろめぐみ
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自慢したがり

 五条悟は何かと目立つ人間である。ただぼんやりと改札を抜けた先にある時計台の前に立っているだけで人目を集める程に。飛び抜けた背丈と珍しい髪の色と顔立ち、パッと見だけでもう目立つ。目立ちすぎて逆にナンパの声も掛かりやしない。待ち合わせ場所にいる五条を見て伏黒は内心で溜息を吐き出した。慣れているとはいえ、注目の的になっている人のところに鈍い振りをして行くのは好きじゃない。どうしたって目立つ人だから仕方の無いことだけど。
 気は進まないが、しかし久しぶりのデートは伏黒が向かわないことには始まらない。
 いやに真剣な顔でスマートフォンの画面をスクロールしている五条は珍しくジャケットなんて羽織って少しめかしこんでいた。黒のジャケットに白のタートルネック。普段の五条だったらもう少し緩い格好をしてくると思ったのに、シンプルながらもちゃんとした格好に少し驚く。服装も相まって更に注目を浴びる人間の前に出るにはワイシャツにニット、ジーンズなんて伏黒の格好じゃ少し浮いてしまう気がした。
「先に言っといてくださいよ。そしたら俺ももう少しちゃんとした格好で来たのに」
 目の前に立ってそう言えば、やっと画面から目を離した五条が「恵」と笑った。
「デートなんて久しぶりだからかっこつけたくなっちゃって」
「…俺もかっこつけてくればよかった」
 呟けばサングラスの向こうの瞳が細められる。
五条を見つめていた数多の視線が、その彼の前に平然と現れた伏黒にも流れてくる。慣れているとはいえ、あまり気分のいいものではなかった。
「今日の恵も惚れ直しちゃいそうなくらいかっこいいよ」
「よく言う」
 五条が手に持っていたスマートフォンを奪い取って、洒落こんだジャケットのポケットにねじ込む。軽口への照れ隠しも含まれていることに、五条が気付いていないわけもない。
 伏黒のそれを合図に五条は伏黒の肩に腕を回して時計台の前から一歩踏み出した。長い足の大きい1歩につられて伏黒もその場から歩き出す。今度は視線が伏黒と五条の背中にちくちくと刺さったが、五条が回した腕がその視線へ向けての自慢したがりなのを知っている。無遠慮な視線は好きじゃないが、五条がこうして要らぬ自慢をしたがるのは嫌いじゃなかった。
「さっき恵が好きそうなご飯屋さん見つけたからそこでいい?」
「いいですよ」
 しかしいつの間に移ったのか、大概伏黒も自慢したがりになった。背中の視線は知らないだろうが、伏黒の恋人はかっこいいのだ。

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