薄明
ごじょうさとる×ふしぐろめぐみ
非公式二次創作ブログサイト
info
生存確認(Misskey)
問い合わせ
メイン
偏頭痛(side伏)
230話ネタ含む
続きを読む
良い子は寝ている深夜3時。音を立てないように玄関扉を開け、真っ暗でしんとした家に帰る。物音1つしない家の中を真っ直ぐ寝室へと進み、このドアも音を立てないように開けた。
カーテンは閉められ、常夜灯すらも付いていない寝室のベットの上、五条から見て右端に小さな山があった。1人でいる時くらい真ん中で寝ればいいのに、口元だけで笑ってから山に向かう。その小さな山の端っこから髪の毛がはみ出していた。恵の頭があるそこに目線を合わせるように寝室の床に腰掛け、布団の中から寝息が聞こえるのを確認する。
このまま寝かせてやりたい気持ちより、少しだけ顔が見たい気持ちが勝ってしまった。
「……あつそ」
布団の端を掴み軽く捲れば、額に髪の毛を張り付かせた恵の寝顔があった。全身すっぽり収まった布団の中はやはり熱が篭るのか、頬も少し赤かった。けれど僅かな光でも視界に入るのが辛いのだろう。五条にもそんな時はあるから無理に布団を剥がす気にはなれなかった。
五条は常に自身の脳を反転術式で回復させていることの副作用として慢性的な頭痛に苛まれているが、時折薬なんか効かない程の酷い頭痛が訪れる。そんな時は今の恵のように部屋の電気を消して、カーテンを閉めて、視界に入る光を消してじっと過ごすしかない。五条がこうなった時、恵は目元に当てる氷嚢も持ってきてくれたりしたのだったか。そしてその時と同じことが、今恵にも起きている。あの場では仕方ない事だとはいえ、何度も五条の領域を受け、脳に多大な負担がかかったことで恵にも慢性的な頭痛が残された。僅かな光すら受け付けない、動けないほどの酷い頭痛も合わせて。
「……ん、」
「ごめん、起こした?」
さっさと布団を戻せばいいのに、要らぬ過去を振り返っていたら恵の瞼が小さく震えて薄く持ち上げられてしまった。半分閉じた目がぼんやりと五条を映してから掠れた声で「…はよ、ございます」と律儀に挨拶を返してくれるのを見て小さく笑った。
「おはよ。夜中の3時だからまだ寝てていいよ」
今こうしてお互いが五体満足で生きている。それだけあればもうそれ以上のことは望めやしない。この業界はいつだって生きているだけで御の字で、ましてやこの世界の運命がどうなるという大きな戦いの後ともなれば、時折訪れるだけの動けない程の頭痛なんて奇跡みたいなものだ。それ以上を望むのは呪術師としてあまりにも馬鹿らしい。ごめんなんて口にしたこともないし、恵から責められたこともない。お互いちゃんと理解している。それでも、胸が痛まないわけじゃあないのだ。
寝てていいの一言に瞼を閉じた恵を見届けてから布団を戻し、小さく息を吐き出す。意味の無いことを考える時間が増えたのも、小さな悩みのひとつだ。
軽くシャワーでも浴びてさっさとソファで寝るかと立ち上がった時だった。くい、と服の裾が引かれた。見れば布団の山から腕が1本伸びていて、五条の服を掴んでいた。
「なに?寝れない?」
「よこ、空いてますよ」
布団の中からもごもごと不明瞭な言葉が聞こえた。一緒に寝てくれと、そう言っているのだ。月の無い夜、光を受け付けない夜、たまに恵はこうして一緒に寝てくれとねだる時があるがそれもまたあの日の後遺症みたいなものだった。心が痛まないと言えば嘘になる。嘘になるが、嬉しいのもまた事実だ。
「シャワー浴びたらすぐ来るから、だからさっさと寝な」
ぎゅうと掴んで離さない恵の指を一つ一つ剥がしながら言えば、少しの躊躇いの後ゆっくりと腕は布団の中へと帰っていった。
こんな事で少しでも痛みが軽くなるのならそれでいい、五条は足早に、けれど物音を立てないように寝室を抜け出した。
畳む
2023.09.08 23:04:09
小説
編集
初期表示に戻る
小ネタメモ
(91)
小説
(107)
絵
(215)
その他
(7)
めぐちゃん先生
(3)
祓本
(3)
オメガバ
(3)
芸パロ
(3)
Powered by
てがろぐ
Ver 4.2.0.
230話ネタ含む
良い子は寝ている深夜3時。音を立てないように玄関扉を開け、真っ暗でしんとした家に帰る。物音1つしない家の中を真っ直ぐ寝室へと進み、このドアも音を立てないように開けた。
カーテンは閉められ、常夜灯すらも付いていない寝室のベットの上、五条から見て右端に小さな山があった。1人でいる時くらい真ん中で寝ればいいのに、口元だけで笑ってから山に向かう。その小さな山の端っこから髪の毛がはみ出していた。恵の頭があるそこに目線を合わせるように寝室の床に腰掛け、布団の中から寝息が聞こえるのを確認する。
このまま寝かせてやりたい気持ちより、少しだけ顔が見たい気持ちが勝ってしまった。
「……あつそ」
布団の端を掴み軽く捲れば、額に髪の毛を張り付かせた恵の寝顔があった。全身すっぽり収まった布団の中はやはり熱が篭るのか、頬も少し赤かった。けれど僅かな光でも視界に入るのが辛いのだろう。五条にもそんな時はあるから無理に布団を剥がす気にはなれなかった。
五条は常に自身の脳を反転術式で回復させていることの副作用として慢性的な頭痛に苛まれているが、時折薬なんか効かない程の酷い頭痛が訪れる。そんな時は今の恵のように部屋の電気を消して、カーテンを閉めて、視界に入る光を消してじっと過ごすしかない。五条がこうなった時、恵は目元に当てる氷嚢も持ってきてくれたりしたのだったか。そしてその時と同じことが、今恵にも起きている。あの場では仕方ない事だとはいえ、何度も五条の領域を受け、脳に多大な負担がかかったことで恵にも慢性的な頭痛が残された。僅かな光すら受け付けない、動けないほどの酷い頭痛も合わせて。
「……ん、」
「ごめん、起こした?」
さっさと布団を戻せばいいのに、要らぬ過去を振り返っていたら恵の瞼が小さく震えて薄く持ち上げられてしまった。半分閉じた目がぼんやりと五条を映してから掠れた声で「…はよ、ございます」と律儀に挨拶を返してくれるのを見て小さく笑った。
「おはよ。夜中の3時だからまだ寝てていいよ」
今こうしてお互いが五体満足で生きている。それだけあればもうそれ以上のことは望めやしない。この業界はいつだって生きているだけで御の字で、ましてやこの世界の運命がどうなるという大きな戦いの後ともなれば、時折訪れるだけの動けない程の頭痛なんて奇跡みたいなものだ。それ以上を望むのは呪術師としてあまりにも馬鹿らしい。ごめんなんて口にしたこともないし、恵から責められたこともない。お互いちゃんと理解している。それでも、胸が痛まないわけじゃあないのだ。
寝てていいの一言に瞼を閉じた恵を見届けてから布団を戻し、小さく息を吐き出す。意味の無いことを考える時間が増えたのも、小さな悩みのひとつだ。
軽くシャワーでも浴びてさっさとソファで寝るかと立ち上がった時だった。くい、と服の裾が引かれた。見れば布団の山から腕が1本伸びていて、五条の服を掴んでいた。
「なに?寝れない?」
「よこ、空いてますよ」
布団の中からもごもごと不明瞭な言葉が聞こえた。一緒に寝てくれと、そう言っているのだ。月の無い夜、光を受け付けない夜、たまに恵はこうして一緒に寝てくれとねだる時があるがそれもまたあの日の後遺症みたいなものだった。心が痛まないと言えば嘘になる。嘘になるが、嬉しいのもまた事実だ。
「シャワー浴びたらすぐ来るから、だからさっさと寝な」
ぎゅうと掴んで離さない恵の指を一つ一つ剥がしながら言えば、少しの躊躇いの後ゆっくりと腕は布団の中へと帰っていった。
こんな事で少しでも痛みが軽くなるのならそれでいい、五条は足早に、けれど物音を立てないように寝室を抜け出した。
畳む